本作品は、道具屋を営む主人公がもっと稼ぎを増やすために奴隷を購入し、冒険者として育てるという物語です。 主人公が道具屋を運営しながら奴隷を買う日常パート、奴隷が依頼（クエスト）を解決するバトル・冒険パート、また、各登場人物の視点の書き分けが非常に上手く、主人と奴隷の「主従関係」を独創的に表現されています。当初の力のない奴隷から、徐々に冒険者へと大きく成長していく少女達の姿も本作品の大きな魅力です。話の展開テンポも良く、気がつけばこの重厚なストーリーにのめり込んでいました！

ノベルピア編集部

全体を通じて、文章で読者をひきつける能力が選考作品の中で頭一つ抜けていると感じます。文章のちょっとした表現からも、キャラクターの性格がよく出ていて、じっくりと一文一文を読み込んでいく楽しみを感じる小説でした。ストーリー構成に関しても見事でした。盛り上げるべきところでしっかりと盛り上げつつ、さらに読者が想像できないような意外な展開も加えていたりして、文章だけでなく展開も優れていました（ネタバレ回避のため抽象的な表現になっていますが、コンテスト運営の皆様には具体的にこの箇所がよかったと伝えています）。個人的に奴隷という過激な設定はフィクションでも安易に使うべきではないと考えていますが、この作品の場合は奴隷制のあるファンタジー世界でないと表現しづらい人間関係の機微がたしかにありました。どのキャラクターも人間臭さと格好良さが両立していて、続きが気になる設定もあり、長く連載してほしい作品です。

森田季節 先生

本作品は、最近のWEB小説のトレンドである「現代ダンジョン」系の作品で、本作品の大きな特徴でもある「スキルツリー」という能力を持った主人公がダンジョン内外で徐々に自分を成長していく、王道でありながらも独創的な物語です。 毎話ごとに更新されるステータスの記載により、主人公の成長が視覚的に分かりやすく、本作品の笑い要素である「ネタスキル」の独創性にも惹きつけられるものがありました。スキルを組み合わせることでどんなスキルにも活用方法を見出している点から、作者の高い想像力を感じました。

ノベルピア編集部

連載を追っていっても、だれることなく、ずっと一定レベル以上の面白さが続いていました。よくあるステータス表示がある作品の枠に収まらず、いわゆるスキル名も独特で強烈に個性を放っていました。しかも、どう見てもネタだろうというようなスキルも小ネタで終わらずにストーリー中にしっかりと生かしています。スムーズにストレスなく読める一方で、実はかなり技巧的に作り込んでいると思います。一番評価したい点は、連載が進むにつれて、文章の技量がどんどん上がっていることです。この作品を書いている間に、作者の方の文章の技量が相当成長しているように感じます。同一作品の中でこれだけ成長を感じられるケースはほとんど初めての経験でした。この作品は長期連載になるかと思いますが、もし可能であればぜひほかの作品もどんどん挑戦していってほしいです。

森田季節 先生

本作品は、主人公が神に選ばれ、異世界へ転生するといった流れはテンプレな展開ですが、その後 神の怒りを買い、獲得する経験値が平均より遥かに低くなってしまったという設定に興味をそそられました。 異世界作品定番のバトルパートと、得た経験値をもとに「異世界通販」を活用して優雅なスローライフを楽しむ二つの展開になっており、戦闘シーンと日常パートの書き分けがしっかりできていてるため、多くの読者の需要を満たせる作品でした。また、本作品の冒頭に出てくる「経験値デバフ」の設定は、経験値という素材を上手く使って主人公の努力を成長へ繋げており、読んでいて強い達成感が感じられました。

ノベルピア編集部

文章の安定感という点では、最終選考の作品の中で随一でした。作者の方は相当に文章の書き慣れた方だと思います。極端に派手な展開もない一方で、いくらでも続きを読んでいられるような、近所のおいしい町中華みたいな小説だと思います（変なたとえですみません……）。一方で、文章の技量が高いがゆえに、ウェブ小説的によくある構成要素を同時に含みすぎていて、作品のコンセプトがあいまいになっている印象を受けます。作者の方がゆっくりと成長していく少年の主人公を描きたいのであれば、その点はかなりのレベルで成功しています。ただ、ほかの要素も多く、この作品の売りなのかわかりづらいです。料理要素をメインに据えるのか、それとも通販の設定をもっと膨らませるのか、スローライフを突き詰めるのか、もう少し強弱をはっきるつけるべきです。書くことは十分にできているので、次回作ではあえて何を書かないかを決めていく段階かと思います。

森田季節 先生

本作品は、「人間の感情」という表現が難しいテーマに対し、少年と少女を中心に広がっていく物語を通じ展開していきます。 人に造られた人形である主人公と、旅で出会った人々とのお互いの価値観の相違を表現する場面がとても印象的でした。また、主人公が旅するなかで、様々な出会いから経験したことがやがて「感情」となり、人間のように「自分」を完成させていくところは圧巻でした。個人主義が広がる現代社会において、人間関係の重要性等を再認識できるような、哲学的で素晴らしい作品でした。

ノベルピア編集部

主人公と少女の旅という形式をとりつつ、かなりハードに死と生の問題に踏み込んでくるところがとにかく圧巻でした。ネタバレになるので具体的な箇所は書きませんが、主人公と少女の死の認識の違いを表現するのが本当に上手いと感心させられる箇所がありました。とにかく小説のセンスのある方だなと感じました。一方で、センスに頼りすぎているがゆえに改善したほうがいい問題点もあります。一文一文が長すぎる傾向にあり、意味がとりづらい箇所が多いです。一文が長いせいで、主語と述語が対応できていない不自然な文章も作品全体を通じてよく見られました。意味は伝わるのですが、文章としては間違っているのではと感じる箇所が多いです。スポーツでたとえると、才能はあるがまだ筋力や体力が足りていない選手の卵といった印象です。今後は読者を意識して文章を書いていくことで、文章の安定面でも成長していただきたいです。

森田季節 先生

本作品は、文章の雰囲気が全体的に熟練されていると感じました。 とある理由で辺境へと左遷された主人公が、中央に戻るために奮闘するといったファンタジー作品ですが、戦術のポイントを作中に上手く落とし込んでおり、ファンタジーでありながらも軍記物として納得できる物語でした。また、様々な場面の描写がまるで絵に描いたようにリアルで、「軍師」「戦場」をテーマにした本作品において、その点が相乗効果として表れていました。主人公に迫る危機を単に主人公一人の力だけで解決するのではなく、まさに「軍師」としての知恵を十分に発揮して危機を解決する展開が魅力的な作品でした。

ノベルピア編集部

文章はかなりお上手ですね。内容もすらすら入ってきましたし、展開やテンポもほとんど問題ないです。基礎的な力は完全にあるので、作風と設定がハマれば、たとえばどこかのライトノベル新人賞やウェブ小説のコンテストでいつデビューしてもおかしくないと思います。ただ、リアリティがある文章である分、展開として不自然な箇所があると、興ざめになるリスクがあります。（以下、完全にネタバレですのでこれから読む人は飛ばしてください）後半、主人公が水浴びを覗きに向かう箇所は、命がけの戦場に少数精鋭で挑むと決めた直後のコメディ要素でストーリー的にだれます。また、覗きがバレて信頼関係が壊れ連携が不十分になれば、戦場での死に直結します。有能なはずの主人公が、結果的に部隊の命を軽視する意味合いになってしまっているので、修正すべきだと思います。

森田季節 先生

本作品は、読者に「読んでいてワクワクする」と感じさせることを大きな目的として書かれていると感じました。 主人公とヒロインのキャラクター性や、現代とファンタジーの雰囲気を見事に融合させる表現で、読み進めるうちに、まるでアニメや漫画を見ているかのように、映像が鮮明に浮かび上がる作品でした。異能力バトルが主な展開ですが、合間にラブコメ要素やシリアス要素がバランス良く織り交ぜられているので、緊張と笑いの緩急のついた作品で、素直に面白さを感じました。

ノベルピア編集部

クラス全体転生のフォーマットを使いつつ、そこから上手に独自の話を作っているなと感じました。異能力バトルに向いている独自のアイデアもいくつか見られました。盛り上げ方やヒキの作り方など、続きが気になるように書く手法全般も手慣れていますね。読者を楽しませるという意識をお持ちなのがよくわかります。文章全般に関しては、とくに前半の地の文があまりこなれていないです。キャラの心情をストレートに説明しすぎていて、臨場感の邪魔になっている箇所が見られました。書籍化などの際には編集者の方と調整を行ったほうがよいでしょう。ただ、後半に入るにつれて前半に多かった弱点はかなり改善されてきたように感じます。連載の中でたしかに成長していますので、このまま成長を続けていってください。

森田季節 先生

本作品は、ディストピア要素とアポカリプス要素がうまく重なり合っている作品です。 近未来を舞台に、脳に埋め込まれたマイクロチップの暴走によって、理性を失った化け物になってしまった大人達から身を守るため、学生達が新たな国を建てるという本作品は、SF的な設定でありながらリアリティがあるため、「実際にあってもおかしくない話」のような現実的に想像できる作品でした。作中の細かな設定一つ一つを見ても、作者が本作品の世界観を完成させるために熟考されたことが伝わってくる作品でした。ただバッドエンドに向かうのではなく、絶望の中にも希望があることを上手に表現した作品だと思います。

ノベルピア編集部

（ネタバレを含む選評なのでご注意ください）ＳＦとして、連載でこの分量を書いたのは素直にすごいと思います。トランプを通貨にするなど優れたアイデアや、ゾンビと対決している現在パートと全体主義化した国家となっている未来パートをリンクさせるなどの工夫など、各所で健闘した作品だと思います。一方で、読者の没入感を削ぐもったいない箇所も何点かありました。キャラの苗字の大半が安芸・伊予などの旧国名ですが、下の名前が設定されていないせいで仲が良いはずの関係でも下の名前やあだ名が一切出ないなど、不自然さを出していました。作中でたびたび登場する偉人の格言も回数が多すぎ、キャラ立ちの貢献よりもくどさにつながっています。また主人公の自己肯定感の低さと過剰にモテる部分が矛盾していて、違和感がありました。文章はストーリーを追う分には問題ないですが、もう一歩、二歩成長させられます。さらなる成長に期待します。

森田季節 先生

本作品は、成人向け作品群の中ではトップレベルの完成度の作品です。 成人向けの作品でありながらも、ストーリーの展開や内容がとても充実している作品でした。成人向け作品は性的な表現や描写等いわゆるR18要素が主なコンテンツですが、その要素を出しすぎず、世界観の設定や主人公とヒロインが結ばれるまでの展開が興味深く書かれています。また、主人公は単に「かっこいい」「優しい」のような短絡的なキャラクターではなく、男性から見ても惚れ惚れするような、理想的な主人公像が作中に表現されており、ヒロインたちが主人公に夢中になることが納得できる作品でした。

ノベルピア編集部

硬質な文章が作品のオリジナリティにつながっています。異世界の一つ一つの要素はギルドやダンジョンなどよく見るものなのに、ダークファンタジー的な香りのある独自の世界観を感じられるのはそれだけ力があるからなのかなと。Ｒ-１８の小説は性描写にかなりの語彙力と表現力が必要なので筆力がある人でないと書けないジャンルですが、十分達成できていると思います。ストーリーもわかりやすいと同時に続きが気になるものですし、「Ｒ作品群の中ではトップレベルの完成度」とコンテスト運営の総評にあったのも納得の出来です。細かな点ですが、記号としてのハートマークを多用しすぎかなと感じました。複数のキャラで同じ記号を使う手法になっていて、キャラの個性が見えづらくなっていました。記号を多用しなくても読者に伝えられるだけの技術力はすでにお持ちなので、そちらで勝負してください。

森田季節 先生